ADHDや自閉症スペクトラム障害の子どものための栄養素
近年、自閉症スペクトラム障害(ASD)や注意欠如・多動症(ADHD)と診断される子どもが増えているようです。
学校や家庭での支援が求められる中、療育や教育だけでなく、日々の食事や栄養が子どもの発達や行動にどう関わっているのかに注目が集まっています。
特に日本では「魚離れ」や「加工食品の増加」といった食生活の変化が進んでおり、必要な栄養をバランスよく摂ることが難しくなっているといわれています。
こうした環境の中で、栄養不足が子どもの発達や行動に影響しているのではないかと考える専門家もいるようです。
Contents
栄養不足が与える影響
ASDやADHDの子どもは、感覚の過敏さや強いこだわりから偏食になりやすく、必要な栄養素が不足しがちです。不足すると学習の遅れや気分の不安定さ、落ち着きのなさにつながる可能性があるといわれています。
不足しやすい栄養素には次のようなものがあります。
– オメガ3脂肪酸:脳の働きを助け、集中力や情緒の安定に関わります。青魚に多く含まれますが、現代の子どもは魚を食べる機会が減り、不足しやすいといわれています。
– ビタミンB群:神経伝達を支え、エネルギー代謝に不可欠です。特に集中力や学習意欲に関わるとされ、バランスよく摂ることが求められます。
– 鉄分・マグネシウム・亜鉛:脳の発達や神経の働きをサポートします。鉄分が不足すると貧血だけでなく注意力の低下にもつながることが報告されています。
– ビタミンD:骨や免疫機能だけでなく、脳の発達にも影響します。日照不足や外遊びの減少により不足しやすい栄養素です。
– GABA・テアニン:リラックスや睡眠の質改善に役立つ可能性があるといわれています。気分の安定や落ち着きをサポートする成分として注目されています。
– ピクノジェノール(海洋松エキス):強い抗酸化作用を持ち、注意力や行動の改善に効果があるとする研究もあります。サプリメントとして利用されることが多い成分です。
これらの栄養素は、子どもの成長や日常生活に深く関わっているようです。
食事からできる工夫
すべてを一度に整えるのは難しいですが、日々の食事に少しずつ工夫を取り入れることで改善につながります。
– 青魚やナッツを献立に取り入れる。苦手な子にはハンバーグやつみれに混ぜて調理すると食べやすくなります。
– 緑黄色野菜や海藻をスープやみそ汁に加える。温かい料理に混ぜると抵抗が少ないこともあります。
– 偏食が強い子には、必要に応じてサプリメントを利用する。ただし医師や専門家に相談しながら取り入れると安心です。
– 朝食に卵やチーズを加えると、自然にビタミンやミネラルを補えます。
おやつの時間にヨーグルトや果物を取り入れるだけでも、栄養をプラスできます。
できる範囲で少しずつ工夫していくことが、無理なく続けるポイントです。
家庭と周囲の理解
ASDやADHDの子どもは、食べられるものが限られていることも少なくありません。
味や食感、においに敏感で、同じものしか食べたがらないこともありますが、保護者は焦らず、子どものペースに合わせて少しずつ工夫を重ねていくことが大切です。
また、家庭だけでなく学校や地域の理解も欠かせません。給食や行事などでも、子どもの特性を理解して見守る姿勢が必要です。
まとめ
自閉症やADHDの子どもにとって、栄養は療育や教育と並ぶ大切なサポートの一つです。
オメガ3脂肪酸やビタミン・ミネラルといった基本的な栄養に加え、GABAやテアニン、ピクノジェノール(海洋松エキス)といった成分も行動や感情の安定に役立つ可能性があります。
もちろん、食事だけですべてが解決するわけではありません。しかし、日々の食事が子どもの未来を支える基盤になることは確かです。
栄養の工夫と同時に、周囲の理解やサポートを積み重ねることが、子どもの健やかな成長を支える大きな力になるのではないでしょうか。
2025年9月8日 記事を更新いたしました。
関連する記事:
子供のメンタルヘルスは食べ物や自然とのふれあいで改善できる?
大人も可能性のあるADHDと薬以外にできること
注意欠陥多動性障害 (ADHD) の症状を引き起こすトリガーには亜鉛欠乏症や食品添加物も?
お問い合わせはこちらから
受付時間 am9:00-pm5:00/土・日・祝日除く
引用文献:
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/22928358/