注意欠陥・多動性障害ADHDと腸内環境の関係
ADHD(注意欠陥・多動性障害)は、集中力のコントロールや気持ちの切り替えが難しくなる発達特性として知られていますが、今では個性として認知されています。
一見すると脳の問題のように思われますが、近年では、腸内環境や生活リズムとの関係にも注目が集まっています。
脳と腸は神経・ホルモン・免疫などを通じて密接に結びついており、この腸–脳軸がADHDの症状に関与している可能性が多数報告されています。
腸内細菌と神経伝達物質
腸内細菌は、セロトニンやドーパミンなど、心の安定や集中力に関わる神経伝達物質の材料を作り出す働きを持っています。
実際、セロトニンの約90%は腸で合成されており、腸内環境が乱れると、気分や注意力にも影響を与えることがわかっています。
ADHD傾向のある人の腸内細菌を調べた研究では、善玉菌の多様性が低く、特にバクテロイデス属や、クトバチルス属の割合が少ないことが報告されています。
これらの菌は短鎖脂肪酸を生成し、脳への炎症を抑える作用を持つため、腸内環境の乱れが神経機能に間接的な影響を及ぼす可能性があると考えられています。
このように、腸の状態を整えることが、脳内の情報伝達にも影響を与えると考えられています。
食事と腸内環境の関係
腸のバランスを整えるためには、日々の食事が重要です。
ADHDの症状を抱える子どもを対象にした研究では、発酵食品や食物繊維を多く含む食事を続けたグループで、落ち着きや集中の改善が見られたという報告もあります。
また、オメガ3脂肪酸(青魚や亜麻仁油など)は脳の神経伝達に関わり、腸内の炎症を抑える効果が示唆されています。
逆に、加工食品・高脂肪食・糖分過多の食事は腸内細菌の多様性を減らし、炎症性物質の生成を促進することがあります。
日常の中で、腸をいたわる食事を意識することが、集中力や情緒の安定を支える一歩につながります。
睡眠と体内リズムも重要
ADHDがある人は、睡眠リズムが乱れやすい傾向があることも知られています。
メラトニンの分泌リズムが遅れやすく、夜型になりやすいという報告もあります。
十分な睡眠が取れないと、脳の集中・判断・抑制を担う部分でもある前頭葉機能が低下しやすく、ADHDの症状を悪化させる要因になります。
朝の光をしっかり浴びることや、就寝前のスマートフォン使用を控えることは、体内時計を整えるうえでとても有効です。
また、睡眠と腸内環境は互いに影響し合うため、どちらかが乱れるともう一方も不安定になりやすいといわれています。
生活の中でできること
ADHDを持つ人を含む、すべての人におすすめの生活習慣は次の通りです。
-発酵食品や食物繊維を意識的にとる(ヨーグルト、納豆、オートミールなど)
-朝食を抜かず、1日のリズムを整える
-寝る前のスマホ・PCを控え、メラトニンの分泌を妨げない
-昼間に太陽光を浴び、夜は照明を落とす
-適度な運動を取り入れ、腸の動きを活発にする
こうした生活習慣は、ADHDに限らず、誰にとっても心と体を整える基礎になります。
小さな習慣の積み重ねが、脳と腸のバランスを穏やかに整えてくれることにつながります。
ADHDは単に脳の問題ではなく、体全体のリズムや腸内環境とも深くつながっています。
集中できない、気分が安定しないというサインは、体からのメッセージでもあります。
腸を整え、生活のリズムを意識することは、脳にとってのやさしいサポートになるのではないでしょうか。
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引用文献:
Gut microbiome in ADHD and its relation to neural reward anticipation
Systematic review of gut microbiota and attention-deficit hyperactivity disorder (ADHD)






