気分と腸内環境の深い関係と腸活のすすめ
疲れやストレスが続くと、気分までどんよりしてしまうことがあります。
実は最近の研究で、腸内環境と気分には深いつながりがあることが少しずつ分かってきています。
腸は“第二の脳”とも呼ばれ、消化だけでなく、神経やホルモンを通じて心のバランスにも関わってます。
この関係性は「腸–脳軸」とも呼ばれています。
気分と腸内環境の関係について、改めて見ていきましょう。
腸–脳軸とは？
腸と脳は、迷走神経やホルモン、免疫システムを通じて、お互いにメッセージを送り合っていることがわかっています。
たとえば、腸の中には、腸管神経系と呼ばれる独自の神経ネットワークがあり、約一億個もの神経細胞が存在します。
これは脳に次いで多く、腸が第二の脳と呼ばれる理由とも言えます。
腸内細菌がつくる短鎖脂肪酸やトリプトファン代謝物、ビタミンなどの成分は、血流や神経を介して脳に信号を送り、気分や睡眠、集中力に影響を与えることがわかっています。
一方で、ストレスや睡眠不足が続くと、腸の動きが鈍くなったり、腸内細菌のバランスが乱れたりします。
これは交感神経が優位になることで、腸が緊張状態に入るためです。
このように、心と体は、腸を通してつながっていることがわかっています。
腸内のバランスと心の調子
研究によると、うつ傾向のある人の腸内では酪酸菌と呼ばれる菌が少ないことが報告されています。
酪酸菌は、腸のエネルギー源となる短鎖脂肪酸をつくり、腸内の環境を弱酸性に保つ働きをしています。
この酪酸が不足すると腸のバリア機能が低下し、炎症が起こりやすくなったり、神経伝達物質のバランスに影響が出る可能性があるといわれています。
また、別の研究では、腸内に特定の菌が多い人ほど、ポジティブな気分で過ごしていたという観察もあります。
これらの研究結果からも、腸内のバランスが心の調子を支える土台になっている可能性が高いことがうかがえます。
腸が気分に影響する理由？
どうして腸が気分に影響するのでしょうか？
このことについて、研究者たちは次のような経路からの影響があるものと考えているようです。
-神経経路：腸から脳へ直接信号を送る迷走神経
-代謝経路：腸内でつくられる短鎖脂肪酸や神経伝達物質の前駆体
-免疫経路：腸の炎症や透過性の変化が全身に影響
-ホルモン経路：ストレスホルモン（コルチゾールなど）との関わり
一見、難しく聞こえますが、つまり腸内の環境次第で、脳の反応や気分にも変化が起こる可能性があるということがうかがえます。
腸から気分を整える習慣？
腸と心はつながっていることを考えると、どのようにすれば心が元気になるかが気になります。
現在の研究では、次のような習慣がも注目されているようです。
-発酵食品を取り入れる
ヨーグルト、納豆、キムチ、味噌など。腸内細菌を育てるような食品を意識しましょう。
-食物繊維を意識する
野菜や果物、全粒穀物、オートミールなどは、腸内細菌のエサとなるプレバイオティクスとして重要です。
-睡眠とストレスケア
寝不足や強いストレスは、腸のバリア機能を乱すといわれています。
深呼吸や軽い運動、好きな音楽などでリラックスする習慣を意識することをお勧めします。
腸活のすすめ
最近では「腸活」という言葉をよく耳にするようになりました。
腸内の細菌類は、私たちの生活に敏感に反応しています。
忙しい日が続くと腸も緊張し、穏やかな時間が増えると落ち着きを取り戻します。
腸を整えるというのは、実は“自分自身を整えること”でもあります。
体と心を同時にケアすることこそが腸活のはじめの一歩と言えるのではないでしょうか。
たとえば、朝起きたら常温の水をゆっくり飲む、よく噛んで食べる、寝る前にスマホを手放して深呼吸をする。
どれも小さなことですが、そうした穏やかなリズムが腸を整えることにつながります。
食事の内容だけでなく、食べ方を整えることが、腸活の本質と言えそうです。
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引用文献：
The Microbiota–Gut–Brain Axis: From Motility to Mood
Understanding the Impact of the Gut Microbiome on Mental Health
Advances in the Gut Microbiome and Mood Disorders
Gut Microbes in Correlation with Mood: A Case Study
