運動で遺伝子と代謝の関係が変わる!?
運動が体にいいということは誰もが知ることですが、最近の研究では、その良さが遺伝子そのものに関係していることが明らかになってきたようです。
そのカギを握るのが「エピジェネティクス」と呼ばれる研究分野です。
これは、遺伝子の配列そのものを変えるのではなく、どの遺伝子をどれだけ働かせるかを、生活習慣や環境によって調整する仕組みを指します。
エピジェネティクスの分野について詳しく見ていきます。
エピジェネティクスとは?
エピジェネティクスとは少し聞きなれない言葉ですが、どのような分野なのでしょうか?
たとえば、同じ遺伝子を持つ双子でも、運動や食事、睡眠の違いによって体質が変わることがあります。
これは、DNAの表面に付くメチル基や、DNAを巻きつけているヒストンというたんぱく質の修飾状態などが、遺伝子のONとOFFの調整機能をおこなっているためです。
運動は、このスイッチを押す代表的な刺激であり、体の中の代謝プログラムをリセットするように働くことがわかっています。
このように、遺伝子の基本的な配列は同じなのに、遺伝子の発現が変わることを研究する分野が、エピジェネティクスと呼ばれています。
エピジェネティクスの視点で見ると、運動とは単にカロリーを消費する行動ではなく、体の中で遺伝子の活動バランスを再設計する、情報入力でもあることが示されています。
筋肉が運動の記憶を覚える?
持久系や筋トレなどを続けると、筋肉の細胞核の中にある遺伝子スイッチが再構成されることが分かっています。
これにより、酸素を効率よく使う遺伝子や、脂肪を燃やす酵素、毛細血管を増やす因子などが活性化し、体が少しずつエネルギーをうまく使うモードに切り替わっていきます。
これが、「代謝が上がる」「疲れにくくなる」といった感覚の正体です。
さらに、筋肉は運動の履歴を覚えているということもわかっています。
しばらく休んでも、再開すれば体がすぐに慣れるのは、筋肉細胞が以前の遺伝子パターンを部分的に保持しているからなのだそうです。
努力はちゃんと体に刻まれているのですね。
ヒトでも確認されている変化
研究によると、数週間の運動介入で骨格筋のDNAパターンが変化し、糖・脂質代謝に関わる遺伝子の働きが高まることが報告されています。
その結果、血糖コントロールの改善、中性脂肪の低下、インスリン感受性の向上などが見られました。
特に注目されるのは、高齢者でも同様の変化が確認されていることです。
年齢を重ねても、体は新しい刺激に反応し、自分の代謝を書き換える力を持っていることがわかります。
何をすればいいのか?
エピジェネティクスの観点から、何をどのくらいすればよいかの目安をお伝えします。
研究によると、週150分ほどの中強度運動(やや息が上がるウォーキングや軽いジョギング)と、週2回の筋トレが理想的とされています。
同じ運動を繰り返すだけでなく、少しずつ強度や時間、内容を変えると、より多くの遺伝子スイッチが刺激されるようです。
例えば、いつもより10分長く歩く、エスカレーターより階段を選ぶ、新しい筋トレメニューを試すなど、小さな変化で十分かもしれません。
運動の後は、たんぱく質を含む食事を摂り、しっかり眠ることも大切にしましょう。
睡眠中には、筋肉や肝臓の遺伝子が修復、再設定され、エピジェネティックな変化が定着していきます。
運動と睡眠は、代謝を支えるためにどちらも必須と考えられています。
生活の中に取り入れるヒント
遺伝子の活動バランスを再設計するために日常でできる小さなヒントこは、次のようなことがあります。
-通勤や買い物の途中で一駅分歩く
-歯みがき中にかかと上げ運動
-テレビを見ながらスクワット数回
-休日は自然の中をゆっくりウォーキング
無理をせずに、少し体を動かす時間を積み重ねるだけでも、遺伝子のスイッチは確実に反応するようです。
まとめ
運動は単なるカロリー消費ではなく、遺伝子の読み方を変える体質改善のプログラムと言えます。
毎日のちょっとした工夫が、体の中のスイッチを動かしていることを意識すると、続けやすいかもしれません。
無理のないペースで、自分のリズムを取り戻す時間を大切にしていきましょう。
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引用文献:
Impact of Physical Activity and Exercise on the Epigenome in Skeletal Muscle and Effects on Systemic Metabolism
DNA methylation of exercise-responsive genes differs between trained and untrained men
Epigenetic rewiring of skeletal muscle enhancers after exercise training supports a role in whole-body function and human health.






