睡眠と代謝とミトコンドリアとの深いつながり
「しっかり寝たはずなのに、朝からだるい」「最近、疲れが抜けにくい」とお感じではありませんか？
単なる寝不足と思いがちですが、このような状態は、体の代謝リズムそのものが乱れているサインかもしれません。
近年の研究では、この代謝を司る存在として、ミトコンドリアが注目されているようです。
睡眠とミトコンドリアの関係とは？
ミトコンドリアは、私たちが摂取した栄養をもとにATP（エネルギー）を生み出す、体のエンジンです。
ところが、睡眠不足や生活リズムの乱れが続くと、このミトコンドリアの数・形・エネルギー産生効率が低下し、全身の代謝バランスに影響を及ぼすことがわかっています。
たとえば、夜更かしが続くと日中ぼんやりしたり、体温が下がったり、甘いものが食べたくなったりといった変化を感じる方も多いのではないでしょうか。
これには細胞レベルでのエネルギー効率の低下が関係していると考えられています。
また、ミトコンドリアは分裂と融合を繰り返しながら、常に形を変えて機能を保っています。
ところが、睡眠が短い日が続くとこのバランスが崩れ、疲労した形のミトコンドリアが増えることが報告されています。
筋肉や神経細胞では特にその影響が大きく、インスリン感受性の低下や代謝酵素の働きにも関わる可能性があります。
睡眠は細胞のメンテナンス時間
私たちは寝ている間に、脳だけでなく体全体の細胞を整える作業を行っています。
特に深いノンレム睡眠の時間帯には、成長ホルモンの分泌が活発になり、ダメージを受けたミトコンドリアの修復や再生が進むことがわかっています。
一方、睡眠不足が続くとこの修復サイクルが十分に回らず、酸化ストレス（活性酸素）によってミトコンドリアのDNAが傷つきやすくなります。
さらに、体内時計（概日リズム）は細胞一つひとつに存在しており、睡眠–覚醒リズムと連動しています。
夜更かしや不規則な生活が続くと、全身の細胞が時差ボケのような状態に陥るようです。
その結果として、代謝の乱れや慢性的な疲労、さらには肥満・血糖値上昇などのリスクにつながることがわかっています。
ミトコンドリアが睡眠の質を左右する？
それでは、どれくらい寝れば十分と言えるのでしょうか？
睡眠の必要量を決める仕組みに、ミトコンドリアの酸化還元バランスやATP合成の変化といったものが関わるという報告もあります。
睡眠を削ると、脳の特定の神経細胞でミトコンドリア関連遺伝子の発現が高まることが報告されており、エネルギー不足に対する一種の補償反応が起こっていると考えられています。
つまり、睡眠とは単に休む時間ではなく、脳や筋肉のミトコンドリアを整備するための時間ということになります。
しっかり眠ることは、細胞をリフレッシュさせ、翌日の代謝をスムーズに保つための自然なメンテナンスなのです。
今日からできること
ミトコンドリアを元気に保ち、代謝を整えるためには、難しいことをする必要はありません。
毎日のちょっとした工夫で、細胞のコンディションが変わるかもしれません。
例えば、以下のことを心がけて見てはいかがでしょうか？
-就寝・起床時刻を一定にする
週末の寝だめなどは控え、毎日同じリズムを守ることが体内時計のリセットになります。
-就寝前1～2時間はスマホや強い光を避ける
ブルーライトはメラトニン（眠りのホルモン）を抑制します。照明を少し落とすだけでも効果的です。
-朝の光と日中の軽い運動を取り入れる
朝日を浴びると体内時計が整い、夜の眠気が自然に引き出されます。ウォーキングやストレッチもおすすめです。
-夜遅い食事や過食を避ける
消化活動が続くと深い睡眠が妨げられます。タンパク質・良質な脂質・食物繊維をバランスよく摂りましょう。
-質の良い睡眠環境をつくる
寝室を少し暗め・静かめに保ち、温度は20℃前後が理想的と言われています。必要に応じて、枕の高さも見直してみましょう。
睡眠、食事、運動などは、すべて体の代謝リズムとつながっています。
ミトコンドリアは、規則正しいリズムの中で最もよく働くといわれています。
逆に、睡眠不足や不規則な生活が続くと、どんなに栄養を摂ってもエネルギーがうまく作られません。
夜ぐっすり眠ることは、単に疲労を取るためではなく、細胞を生かすための最も基本的な行動。
眠ることは、代謝を整えること、という意識で、今夜から少しだけ眠りの質を見直してみませんか？
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