アルツハイマーとアルコール飲料との関連

2021年11月08日

健康的な活動と習慣

飲酒と健康に関しては、かねてより色々な説がありました。
いくつかの研究により、かつては少量を飲むことにより、健康に良い可能性があることが示されていました。
その後も研究は進められ、現在では少量であっても飲酒しないに越したことはないといった考え方が主流となっています。
飲酒には様々な影響が考えられますが、最近の研究によると、特に脳の健康に有害な影響を与える可能性が示唆されているようです。
中でもアルツハイマー病との関連は注目されており、少量のアルコールでさえアルツハイマー病のリスクを高めることを報告する発表も出ています。

・アルツハイマー病

アルツハイマー病は、記憶の進行性の喪失や、他の様々な認知面での変化、そして平均余命の低下を特徴とする変性脳障害です。
世界中で研究が行われていますが、現在のところ特効薬は残念ながら無いと報告されています。
高齢化が進むにつれて世界的にもその患者の数は増え続けており、効果的な治療法が開発されない限り、患者数は50年以内に4倍にものぼるとも予想されています。

・アルコールとアルツハイマー病

アルツハイマー病の脳の特徴に、アミロイドプラークがあります。
アミロイドプラークとは、アルツハイマー病患者の脳に見られるアミロイド斑の主成分が脳に蓄積したものです。
これにより脳が記憶を保存する方法に影響を与える正常な神経細胞の伝達を妨げるとされています。
ヒトの体は、リンパ系と呼ばれる細胞を介して脳からこれらのアミロイドプラークを自然に除去することができます。
睡眠中にアミロイドを除去し、血液およびリンパ系に流すことができるのです。
そのため、睡眠がいかに大切であるかは言うまでもありません。
これは、 “活性化ミクログリア細胞”と呼ばれる中枢神経系の細胞のおかげです。

中枢神経系のミクログリア細胞は、神経細胞の損傷や感染症に対する防御の第一線として機能することがわかっています。
研究者たちにより、人が長期的にアルコールを摂取すると、ミクログリア細胞が炎症を起こし、機能しなくなる可能性があると考えられていることからも、その分野における研究が進められてきました。

動物実験では、研究者はラットの1つのグループをアルコールにさらしました。
ラットの第2群はサイトカインと呼ばれる炎症性細胞にさらされ、第3のグループはアルコールおよびサイトカインにさらされました。
データ分析の後、研究者たちにより、アルコールにさらされたミクログリア細胞がアミロイドを巻き込む能力の約15%がわずか1時間後に阻害されることを発見しました。

米国イリノイ大学シカゴ医科大学の麻酔学教授で主任研究者のダグラス・ファインスタイン博士は、この研究の結果、アルコールが脳からアミロイドを効率的に消去するミクログリアの能力を阻害することが示唆されており、アルコールの断続的な摂取によりアルツハイマー病を発症するリスクが高いと考えていると説明しました。
そのニュースは、関係者の間で大きな話題を呼ぶことになったのです。

・まとめ

アルツハイマーの特徴である脳に蓄積したアミロイドプラークを除去することができるミクログリア細胞は、アルコールの摂取によってその機能を失ってしまう可能性があることがわかりました。
少量のアルコールが有益であるという考えを支持する考え方もあります。
実際に気心の知れた仲間との飲酒は楽しい物ですし、自粛期間中は「リモート飲み」の流行もありました。
これから年末にかけて、飲酒する機会の増える方もいらっしゃるかもしれません。
飲酒によりアルツハイマー病を発症する危険性があるとしたら、お酒の摂取量をコントロールすることも検討し、暴飲暴飲を避けることはおすすめといえるのかもしれません。
まずは、飲酒の際には同量の水も一緒に飲むことを始めてみるのもおすすめの1つとして報告されています。

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TEL:042-736-5787

引用文献:
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/31733664/
https://www.alzheimers.net/alcohol-and-alzheimers
https://pubs.niaaa.nih.gov/publications/arh25-4/299-306.htm

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