子どものADHDは、朝のコルチゾールにヒント?
ADHD(注意欠如・多動性障害)を持つ子どもたちが抱える問題の中には、朝がつらい、集中が続かない、感情が爆発しやすいといったことがあるようです。
こうした日常の課題の背景には、性格だけではなく、脳と体のリズムが大切なことがわかっています。
特に、ホルモンバランスが関わっている可能性があるようです。
ADHDの子どもとコルチゾールの関係
2022年の中国の研究による論文では、ADHDの子どもは朝のコルチゾールの分泌が、そうでない子どもと比べて低いことが明らかになりました。
コルチゾールとは、ストレスホルモンとも呼ばれているホルモンです。
この発見は、将来的に、ホルモンレベルからADHDを診断・評価するための新たな手がかりになるかもしれないと注目されています。
この研究は、中国・北京の小児病院で6~17歳の以下のような子どもを対象として行われました。
ADHDと診断された子ども:123人
健康な子ども:44人
研究では、起床直後・起床30分後・就寝前の3回にわたって唾液を採取し、そこに含まれるコルチゾール(副腎皮質ホルモン)濃度を測定しました。
結果として、ADHD群では3つすべての時間帯においてコルチゾール濃度が対照群よりも有意に低いことが分かりました。
このように、ADHDの子どもでは1日を通して、コルチゾール分泌が全体的に低いという傾向が見られたようです。
コルチゾールと脳の働きの関係とは
コルチゾールは、ストレスホルモンとして知られていますが、実は覚醒や集中、意欲を保つうえでも重要な役割を担っています。
通常、コルチゾールは起床とともに急激に分泌が増える覚醒反応を示し、私たちの脳と体を活動モードに切り替えるスイッチの役目を果たします。
ところが、このスイッチの働きが弱いと、朝のだるさ、集中困難、やる気の低下、感情の不安定さにつながってしまう可能性があるようです。
今回の研究では、この部分がADHDの子どもたちに共通する特徴として現れていたのです。
さらにこの研究では、特に朝のコルチゾールレベルが低い子どもほど、ADHDの症状が重い傾向にあることも報告されています。
日常生活のヒント
すべてのADHDがホルモンの影響だけで説明できるわけではありませんが、今回の研究は、生活習慣が脳のリズムに大きく関わっている可能性を示しています。
特に注目したいのが、朝のコルチゾールです。
このホルモンがスムーズに分泌されることで、脳と体は1日のスタートに向けて、目覚めの準備を始めます。
では、私たちが日常の中でできる工夫とは、どんなことでしょうか。
-朝の光を浴びる
起きたらすぐにカーテンを開け、太陽の光を浴びましょう。太陽光は体内時計をリセットし、脳に「朝が来た」と伝える刺激になります。
-朝食をしっかりとる
ブドウ糖やタンパク質を含む朝食は、脳の働きを助け、コルチゾールの安定にもつながります。
-睡眠リズムを整える
就寝と起床の時間をなるべく毎日同じにすることが、脳とホルモンのリズムを整える第一歩です。
週末だけ大きく寝だめをするような習慣は、リズムの乱れを招きます。
-夜のブルーライトに注意する
スマホやパソコンの画面から出る光は、脳を覚醒させてしまいます。
寝る1時間前には画面を手放し、眠りやすい環境を作るよう心がけましょう。
こうした日常的な工夫が、コルチゾールリズムを正常化するための脳の覚醒と安定につながる可能性があると考えられます。
まとめ
ADHDは、脳だけでなくホルモンや体のリズムとのつながりとも大きなかかわりがあることがわかりました。
「集中できない」「落ち着きがない」といった表面的な行動の背後に、体内時計やホルモン分泌の不調もあるかもしれません。
このような視点から、ADHDへの理解がより深まり、適切なケアができるようになるかもしれません。
毎日の小さな積み重ねが、少しでも症状を抑えることにつながる可能性があります。
朝の時間を大切に過ごしたいですね。
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引用文献:
Cortisol levels in children with attention-deficit/hyperactivity disorder