アルコール使用は脳にダメージを与え、認知症リスクを高める可能性?
アルコールの摂取が健康に与える影響については気になるところです。
近年注目されているのが、脳への影響と認知症との関係です。
特に中高年以降の健康を考える上で、飲酒習慣が脳に及ぼす影響を知ることはとても重要です。
アルコールの使用による脳への影響を探ります。
大量飲酒と脳血管へのダメージ
ブラジルで行われた研究では、1,781人の脳を分析し、飲酒の程度と脳の変化との関連を調査しました。
被験者は「飲酒経験なし」「適度な飲酒者」「大量飲酒者」「過去に大量飲酒していたが死亡3ヶ月前までに中止した人」の4つのグループに分けられました。
結果として、適度な飲酒者であっても「ヒアリン細動脈硬化」という血管の異常が見られやすくなっていたことがわかりました。
これは、細い動脈にヒアリンと呼ばれる物質が沈着し、血管が硬く狭くなる状態で、高血圧などと同様に脳血管の健康に悪影響を及ぼします。
特に大量飲酒者では、ヒアリン細動脈硬化のリスクが、飲酒しない人に比べて約133%も高まっていたという結果が出たようです。
さらに、大量飲酒者や過去に大量に飲酒していた人では、「アルツハイマー病に関係する神経原線維変化」のリスクも上昇していたと報告されています。
脳の重量が減少し、記憶力の低下や認知機能の衰えを示す所見も多くみられたそうです。
ただし、今回の研究では、現在の認知機能と飲酒量の間に明確な因果関係は認められませんでした。
しかし研究者は、アルコールがまず脳の血管に影響を与え、それが長期的に認知機能の低下を引き起こす可能性があると推測しています。
研究から見る課題と限界
この研究にはいくつかの制限があります。
まず、被験者の飲酒歴や健康情報は主に親族からの聞き取りに基づいており、記憶の不確かさや主観が入りやすく、情報の正確性に限界があります。
特に、飲酒量・期間・変化の詳細が不明な点は大きな課題です。
また、ビタミンB1(チアミン)の欠乏など栄養状態や基礎疾患(高血圧・糖尿病など)の影響も十分に考慮されていないため、アルコールと脳の変化に関する因果関係を断定することは困難です。
こうした点を踏まえると、この研究は有用な示唆を与えるものの、慎重な解釈が求められます。
今後はより精密なデータ収集と長期的な追跡調査を通じて、アルコール摂取と脳機能との関係を明らかにしていく必要があると言えそうです。
医療現場への影響
神経内科医のハリス・カマル医師は、「中等度から大量のアルコール摂取歴がある場合、脳内の細い血管に動脈硬化のような変化が生じることがあり、それが認知機能の低下につながる可能性がある」と述べています。
つまり、長年にわたる過度な飲酒が、脳の血管にじわじわとダメージを与え、その結果として思考力や記憶力の低下などが見られることがあるというわけです。
こうした変化は、血管性認知症をはじめとする、アルコールに関連するさまざまな脳の疾患の理解にもつながる大切な視点と言えそうです。
お酒との付き合い方を見直すきっかけにもなりそうですね。
日常生活でできる予防と対策
アルコールが脳に与える影響を考えると、日常生活の中で飲酒習慣を見直すこともおすすめと言えます。
完全に禁酒する必要はないとしても、適量を守る、休肝日を設ける、体調や年齢に応じて量を調整するなど、無理のない範囲での工夫が重要です。
また、十分な睡眠やバランスの取れた食事、定期的な運動など、脳の健康を守るための基本的な生活習慣も忘れてはいけません。
医師や専門家と相談しながら、無理なく続けられる方法を見つけることが、認知症予防にもつながっていくと言えそうです。
まとめ
この研究結果は、たとえ適度な飲酒であっても、脳血管に悪影響を及ぼす可能性があることを示唆しています。
過去に大量飲酒していた人にも、その影響が脳に残る可能性があるというのは、非常に重要な知見です。
今後さらに研究が進めば、飲酒習慣が脳に与える長期的な影響がより明確になり、臨床の現場でも認知症予防や生活指導に活用されていくことでしょう。
私たち一人ひとりも、自身の飲酒習慣を見直し、より健康的なライフスタイルを目指すきっかけにしていきたいものですね。
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引用文献:
Alcohol use could contribute to dementia by damaging the brain